人づてならで

今日も駅まで一緒だったわ。もうね、ああだこうだと理由をつけて送ろうとして居るのが、一緒に居ようとして居るのが目に見えて居て、それが何と云うか、煩わしくて堪らなくて。
駄目なのは分かって居るし酷いのも分かって居るのだけれど、どうしても煩わしくて冷たくしてしまう。距離を取ろうとして居た矢先なのもあるし、とある人にニヤニヤしながら関係に言及されたのもあって。もう一緒に居るのが嫌になりそうで。
ごめんなさいね、非道い自覚はあるのよ。寧ろ感謝しなければならないことが沢山あるのにね。

どうしたらその好意は無くなるの、どうしたら友人に戻れるの。
貴方のそれは、本当のものではなくて、口に出す内に強化されて積もり積もっただけのものにしか思えないわ。張りぼての拠り所にしか見えないわ。だからこそ、それに応える気にならないのよ。

今日もまた駅まで一緒だったわ。幾度も拒んだのに、「一緒に帰りたいんです」と言い切られて、それも尚拒んだけれど、道中で友人カップルと一緒に追い付かれて、結局二人になって駅まで。どうしてそんなに私なんかに懐いてしまったのでしょうね、貴方は。
でもね、こう言うと凄く高慢で傲慢だけれど、貴方に私をくれてやる気はないのよねぇ。だから貴方は、早く私を諦めなさいね。何故そんなに私に拘って居るのか知らないけれど。

わざわざ余生に付き合ってあげる程、優しくもないし暇でもないのよ、私は。
だから貴方には一生掛かっても無理ね。滑稽だわ。

今日は、寄りたい場所もあったし一緒に帰りたくなかったから、彼と喋って居る隙に何も言わずに帰ったわ。
一緒に居るのは構わないけれど、二人きりにはなりたくないのよ。好意と下心丸出しで触れて来るから、居心地が悪くて堪らない。触れられるのが嫌で堪らない。触んな、と拒否しても触れて来るから、その諄さも煩わしい。嫌いになってしまいそうだからやめて下さいな、もう。

昨日、「正直貴方を心の拠り所として居る部分もある」と言われて、ああ矢張りね、と思った。重いわ。そんなことはとうの昔に感付いて居ますし、寧ろ駄々漏れですけれど。気付かれて居ないとでも思って居たのかしら？
そう云う所、本当に元彼に似てるわよね。あの人も私を拠り所にして依存して居る節があったもの。それが重くて煩わしくて堪らなくて、嫌になったものね、あの頃の私は。だから私は余計に貴方に振り向く気がないのよ。気付きなさいな。

今のこの色々と切羽詰まって居る時期に、心の重荷にならないでくれないかしら。重くて堪らないわ。
まぁこの時期だからこそ、私に依存して居る貴方は余計に寄り掛かって来て居るのでしょうけれど。私も自分の事で一杯一杯なことに気付いて頂戴な。貴方の世話を焼くような余裕はないのよ。年上の癖に、年下に寄り掛かってんじゃないわよ。

今日で最後。もう暫く、皆と会えなくなる。この経験は三度目だけれど、先の不安も相俟って、本当に切なくなる。嫌だわ。心底、嫌だと思う。

もう今日が最後だから、彼とは沢山話したわ。彼なりに軽口を叩きながら励ましてくれて「何だかんだみつちゃんなら大丈夫だって」と言ってくれて。「この間の分で貯金があるんだし、根性あるし、乗り越えられるでしょ」と。
有難う、頑張るわ。

そして、今日もまた駅まで一緒に帰ったわ。宮さんも凄く不安に思って居ることは重々分かって居たから、最後だし、と思って。まぁ、少しでも心が落ち着けば良いわね。