>>187【続き】
実は和兄さん、こんな不安を抱いていました。
「僕は52 歳を超えられるんだろうか?」
この漠然とした不安感を福山さんもすごくよくわかると言います。なぜなら――。
「僕の父も亡くなったのが53歳だったので。その年齢が近づくにつれて、根底にあった不安や恐怖がだんだん強くなっていくのを感じました」
その想いが、アルバム『AKIRA』の制作の原動力になったのだと福山さんは明かします。
「父が亡くなったのは僕が17歳のときでした。そのときに感じた悲しさや苦しみから逃れるために様々な音楽を聴いたり、ギターに没頭したりしました。そこから僕の音楽の旅が始まったとするのであれば、ソングライティングという行為で僕は僕自身を救済してきたのではないか。その道程をきちんと作品に昇華したいという想いを形にしたのがアルバム『AKIRA』でした」
『AKIRA』がリリースされたのが、2020年12月8日。
「本来であれば、リリースした年に30周年ツアーとしてアルバム『AKIRA』を持って全国の皆さんに会いに行く予定でした。僕の故郷、長崎の稲佐山でのライブも含め。ところがコロナウイルスという予期せぬ事態により、結果として僕が53歳になる年に、つまり父が亡くなった年齢と同じ年齢で『AKIRA』という父の名を冠した作品を持ってツアーをまわることになったのです。非常に運命的であり、また、“命の役割”というものを強く意識しながらのツアーになっています」