あああああああ・・・・
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#11 [七氏]
安い宿なので、部屋の中から廊下を見られるようなレンズはない。
ベッドを出て、ドアに近づいて聞き耳を立てる。
「……昨今の政治情勢は、きわめて憂慮すべき状態で、現政権における指導力の無さは……」
:09/01/19 20:12 :PC :4/DQWLFA
#12 [七氏]
なんだ、これは?
新聞の政治欄を朗読でもしてるのか?
どこかの部屋からTVの声が漏れ聞こえてくるのではない。
確かに、廊下で話している。
やがて、その声がだんだん大きくなってきた。
:09/01/19 20:12 :PC :4/DQWLFA
#13 [七氏]
「一方、野党側の弱体化も目をおおわしむるものがあり、単なる権力争いに堕落し」
声は大きいのだが、トーンは平静のままである。選挙演説のような叫びではない。
:09/01/19 20:13 :PC :4/DQWLFA
#14 [七氏]
TVの政治解説者の話し方で、ボリュームを最高に上げたような感じである。
ドアに耳をくっつけるまでもなく、いやでも聞こえてくる。
ここにいたってやっと、
「廊下にいるのはアブナイ人間だ……」
と確信した。
:09/01/19 20:13 :PC :4/DQWLFA
#15 [七氏]
そのとき、ドアのノブが「ガチャリ」と音を立てた。
心臓が飛び上がった。
「この部屋に入ろうとしている!」
ドアはオートロックである。そう簡単に入ることはできないが……
数回ガチャガチャと回して、すぐに止んだ。
ほっとした次の瞬間、
:09/01/19 20:13 :PC :4/DQWLFA
#16 [七氏]
「どん!」
とドアに体当たりしてきた。
「おい、冗談じゃないぞー!」
「どん!」
「どん!」
「どん!」
:09/01/19 20:13 :PC :4/DQWLFA
#17 [七氏]
体当たりのたびに、少しずつ少しずつドアの隙間が大きくなってきた。
オートロックの他に、いつも用心のために掛け金をしているが、それもだんだん歪んできているようだ。
:09/01/19 20:14 :PC :4/DQWLFA
#18 [七氏]
外交問題も山積している状態で、国内のつまらないことに汲々としているような有様では」
体当たりしている間も、例の政治解説は続いている。どう考えても、異常だ。
:09/01/19 20:14 :PC :4/DQWLFA
#19 [七氏]
「どん!」
「どん!」
「どん!」
:09/01/19 20:14 :PC :4/DQWLFA
#20 [七氏]
ドアが、10センチもの隙間があくような状態になってきた。
私はもう、ただ呆然とそれを見つめることしかできなかった……
:09/01/19 20:16 :PC :4/DQWLFA
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