また朝からロッキー

懐かしい恩人は危険な男であった
二言目には必ずと言っていいほど
殺すぞ？と金剛像の様に大きな目玉をギョロリとさせた。

そんな恩人はその実、大変に情に厚く、頼られれば必ずと言っていいほど力になってくれる頼もしい腕力の人であった。
孫を溺愛し、チーズケーキこよなく愛し、チーズケーキを作れる私を生かしておいて下さった。
その昔は何か筋の通らないことがあると30里はある遠い山から疾風の様なスピードでハーレーに跨り降ってきては殴り込みにくる要注意人物であったそうで、私の先輩は何度となく死刑宣告を受けた。
実は私も2度ほど宣告を受けて入るが、こうして平穏無事に生活しており、ハーレーのエンジン音が聞こえてこないという事は、未だ執行猶予中である事にほかならない。

そんな恩人に無礼を働き、死刑宣告を受けた直後の者には先輩が決めたテーマソングがある。

それはトムクルーズ主演映画、トップガンのテーマソング、デンジャーゾーンである。
そう直訳すれば玉置浩二すら逃げ出すほどの危険地帯に他ならない。

m.youtube.com/..

恩人の琴線に触れた瞬間、電話での問答が始まり、閉口したかと思えば、殺しに行くから待っていろと言う。
そうして電話の受話器を置いて青ざめていると、着信履歴を確認した先輩達数名が嬉しそうな顔をして
みな口々にトップガンのイントロを口ずさむ

トゥルトゥ、トゥントゥントゥン♫

先輩達が戦闘機を真似て両手を広げて死刑宣告を受けたものの周りを飛び回る

およそ悪魔の様な遊びである

男の愛想と女の愛想とは違うものかも知れないな。
男の愛想は女同士のいざこざで終わるが
女の愛想は男の執着と他の女の嫉妬を引き連れて
まるで東海道新幹線が如く西へ東へ様々な人々を連れて怒涛の16編成で走り抜けて行く
それはかくも恐ろしい歪んだ感情のレールの上を滑る様にして不幸な新大阪駅、あるいは東京駅の終電に着くのだろう

あれはなんだ。
偽東京タワーだな。

子供の頃、送電線をあやとりの様に模様をつくる鉄塔を偽東京タワーだと思っていた
しかし、あれに登ってはいけない、高圧電線だからだ。
ちかよればヂリヂリとなんだか不気味な音を鳴らして佇んでいる

もし登れば則ち天国へと続く塔になる事を幼い私は知らなかった。

沖縄にもあったんだ

福山雅治の歌声が聞こえてくる

慣れとは良い様で良くないな

やっぱり小三治さんのおっしゃる通り
はじめて話すと思えの精神
観阿弥世阿弥の初心忘るべからずの精神

しかし昔日の初心がどんなものだったかも思い出せないのだ。
私はそもそも阿保であった。

人生ぶらり途中下車のつもりが迷子である