白と黒の八十八鍵の上で

目に見えているものに潜む
目に見えていないものの存在について

海底に座り込んで
呼吸しているような気分だ。

『あ、奏ちゃん？お疲れー！
「いつも思うんだけどさ
　俺に電話してきてるんだろ
　奏ちゃん？って確認要らなくね
『確認というかぶっちゃけ癖だよね
「あっそ。
『今、集団自殺を面白半分で追う
　大学生たちが館に閉じ込められて
　毎日一人ずつ死んでいくっていう
　映画を見てるんだけど
　これがめちゃくちゃ怖くてさ
「で、ビビって俺に電話してきたと
『んーまぁそんなとこ
「それ見たことあるけど
　その状況の何が一番怖いって
　最後の一人として生き残る可能性が
　無いとは言えないことと
　死に方を選べないことだよな
『死は恐れないって？
「いや、どうせ死ぬなら
　死に方ぐらい選びたいなってこと
『どんな死に方がいいの？
「ミンチ
『理由は？
「死に顔が醜そう

結局風呂の中で
二時間も電話してたのか。

いろいろ話して
自分が卑屈になっていただけだと
気付いた。

考えすぎるのは、よくないな。

視覚素子は笑う

回避方法の無い悪い知らせを
突きつけるような意地の悪さ。

廃墟に積もりつもった
埃の最下層で潰れてる
繊維の死骸みたいな精神状態。