623 『海賊ﾌｨｯｼｬｰ･ﾀｲｶﾞｰ』

扉絵 ｼﾛｯﾌﾟ村 ｶﾔ

【ﾀｲﾖｳの海賊団 船内】

ﾀｲｶﾞｰ｢やっと手に入れたな…ｺｱﾗの故郷の永久指針｣
ﾊﾁ｢ﾆｭｰ!!ｺｱﾗ!故郷に帰れるぞ!｣
ｺｱﾗ｢…｣

【服装･髪型を綺麗にしたｺｱﾗ】

ﾊﾁ｢あはは 変わるもんだな｣
ｺｱﾗ｢あたしこういうのは…｣
ﾊﾁ｢何だ-せっかく買ってやったのに!散髪もしたしな!この方が母ちゃん喜ぶぞ｣
ｺｱﾗ｢そ…掃除しなきゃ｣
ﾊﾁ｢ﾆｭｰ!おめ-働く癖やめろ ここはﾏﾘｰｼﾞｮｱじゃねぇぞ!｣
ｱﾗﾃﾞｨﾝ｢好きにさせてやれ ゆっくりでいい ﾄﾗｳﾏなんてのはそう簡単に消えるもんじゃない!｣

【ﾀｲﾖｳの海賊団 船医ｱﾗﾃﾞｨﾝ(ｲﾀﾁｳｵの人魚 元ﾈﾌﾟﾁｭｰﾝ軍兵士)元奴隷】

ｱｰﾛﾝ｢よくわかるようだなぁｱﾗﾃﾞｨﾝのｱﾆｨ…元奴隷には元奴隷の気持が 本当は殺してやりてぇんだろ!?今すぐ!こいつはｱﾝﾀを飼ってた奴と同類の人間だぞ!｣
ﾀｲｶﾞｰ｢おうやめねぇか　ｱｰﾛﾝ｣
ｱｰﾛﾝ｢本心をさらしてみろ 母ちゃんから何て教えられた?魚人を見下してるんだろお前の親も ｼｬﾊﾊﾊ｣
ｺｱﾗ｢ﾆｺﾆｺ｣
ｱｰﾛﾝ｢人間の社会ってのはそうなのさ 人間という種族が世界一素晴らしく偉いんだと思い込んでる 子はまたそれを見て育ちつけあがる!誰かがぶっ潰してやらねぇとこの流れは止まらねぇ!この3年の航海で…さんざん見てきたﾊｽﾞだろうお前ら!人間達がおれ達を蔑む生意気なあの目を!お頭がいなきゃおれは何してたかわからねぇ!｣

ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢蔑むのは一部の人間…他は違って見えたがのう わしにはみな…いつも脅えておる様に見える 海賊じゃからか?何をそんなに脅える｣
ｺｱﾗ｢…だって…何も知らないから…｣
ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢…｣

【回想】
乙姫(私達はまだ彼らの事を何も知らない!!)

ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢知らんと こえぇ…知れば何か変わるのか…｣

【ｺｱﾗと楽しそうに過ごす日々】

【数週間後 偉大なる航路 ﾌｰﾙｼｬｳﾄ島】

ﾀｲｶﾞｰ｢ｺｱﾗ!!船から降りろお前の故郷だ!お前の村はどこだ､入口までおれがついていこう｣
海賊｢うおお行くなよｺｱﾗ-！一緒に旅しようぜぇぇぇ いいｺだよおめ-人間なのに-｣
ｸﾛｵﾋﾞ｢泣くなお前ら｣
ｺｱﾗ｢あたし村のみんなに言うよ!魚人にはいい人達がたくさんいるって!｣
ﾊﾁ｢おめ-元気でな-!!｣
ｱｰﾛﾝ｢大人になる頃にゃあのｶﾞｷも他と同じになる｣
ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢ｱｰﾛﾝ貴様!｣
ｱｰﾛﾝ｢ｼﾞﾝﾍﾞｴのｱﾆｷ…あんたこの3年でずいぶん変わったな 考えてみろ村で一人魚人はいい奴だと主張し続ける意味があるか!?まるで乙姫の主張のように声は虚しく吹き抜けるだけだ!｣

【ｺｱﾗ 親と再開 そしてｺｱﾗとﾀｲｶﾞｰの別れ】

ﾀｲｶﾞｰ｢!!!｣
ｽﾄﾛﾍﾞﾘｰ｢私は海軍本部ｽﾄﾛﾍﾞﾘｰ少将である 君達がこの島へやってくる事はある島の者から通報を受けている 今君が行った村の大人達もここで少々騒ぎが起きることを承知してくれている 天竜人の所有物である娘を見逃すという条件でな 罪名は2つある､よくわかっているﾊｽﾞだ｣

【襲撃と逃亡】

【発砲する】

ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢何じゃ今の銃声は!海を見ろ!｣
ﾁｭｳ｢海軍だ!取り囲まれてる!ﾁｭ!｣
ｱｰﾛﾝ｢罠だったんだ!見ろ!!これが人間だ｣
ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢全員船を捨て海底へ避難しろ!ﾀｲのお頭が危ない!!｣

【場面変わり ﾌｨｯｼｬｰ･ﾀｲｶﾞｰ】

海兵｢何なんだ!倒れねぇ!!｣
海兵｢気をつけろ!ﾏﾘｰｼﾞｮｱをたった一人で襲撃した男だ!!｣
ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢ﾀｲのお頭ぁぁ!｣
海兵｢少将殿!ﾀｲﾖｳの海賊団です!｣
ｽﾄﾛﾍﾞﾘｰ｢ｱﾚか噂の…｣
ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢おのれ海軍!｣
ｱｰﾛﾝ｢船をやられた!!海軍から一隻奪うぞ!!｣

【場面変わり ｺｱﾗ家】

ｺｱﾗ｢何か聞こえない?お母ちゃん｣
母｢いいえ｣
ｺｱﾗ｢?｣

【知らないｺｱﾗ】

【ﾀｲﾖｳの海賊団は待ち伏せによる奇襲攻撃を受け船長ﾀｲｶﾞｰ瀕死の重傷 しかし一味は海軍の船を奪い沖への脱出に成功した】

ﾊﾁ｢お頭!!何ﾊﾞｶなこと言ってんだ!｣
ｱﾗﾃﾞｨﾝ｢血を流しすぎてる!すぐに輸血せにゃあんたの命が!お頭の血はめずらしい型だ!ｳﾁの船員にゃ同じ血液の奴がいねぇんだ!!｣
ﾀｲｶﾞｰ｢だが…この船にｽﾄｯｸされてた血なら人間の血だろう｣
ｱﾗﾃﾞｨﾝ｢そうだ!人間とおれ達には同じ血液が流れてる!人間の血は使えるんだ!命が助かる!だからとにかく輸血を…｣
ﾀｲｶﾞｰ｢入れるな!そんな血で生きながらえたくはねぇ!汚らわしい血だ!それはおれ達魚人族を蔑み続けた血だ!恩など受けない!情けなど受けない!｣

ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢…お頭!?｣
ﾀｲｶﾞｰ｢おれは人間に屈しない!…お前らには言いたくなかった おれは最後の旅で…｣

【回想】
ｼﾞﾝﾍﾞｴ(今回の旅は長かったのう)
ﾈﾌﾟﾁｭｰﾝ(おぬし今回の旅で一体何を見た…)
ﾀｲｶﾞｰ(人間です)

ﾀｲｶﾞｰ｢旅立って程なく…捕まっちまったんだ!ﾏﾘｰｼﾞｮｱに数年 おれは!!奴隷だった!｣
ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢何じゃと…｣
ｱｰﾛﾝ｢…!!!｣
ﾀｲｶﾞｰ｢そこで見たのは…人間の狂気…命からがら逃げ出したが目のあたりにした奴隷達を放ってはおけなかった｣
ﾊﾁ｢お頭…｣
ﾀｲｶﾞｰ｢よく聞けおれは思うままに生き…結果 乙姫王妃をひどく…邪魔しちまったが…あの人は正しい…誰でも平和がいいに決まってる だが本当に島を変えられるのは…ｺｱﾗの様な何もしらねぇ次の世代だ…だから頼む!!お前らは島に何も伝えるな!おれ達に起きた悲劇を!人間達への怒りを!｣

｢この世にゃあ心の優しい人間達はいっぱいいるんだ!そんなことはわかってる!なのに…死んで消えゆく者達が!恨みだけこの世に残すなんて滑稽だろう!頭じゃわかっていても おれはもう心の鬼が邪魔をする!体が…その血を拒絶する!｣

｢おれはもう 人間を愛せねぇ!｣

ｼﾞﾝﾍﾞｴ｢お頭そんな事言わんで生きてくれ!!頼む!!生きられる命なんじゃ!!｣ｱﾗﾃﾞｨﾝ｢お頭!何を言おうと解放してもらった全ての奴隷達にとって!あんたは一生の大恩人だ!偉業を成した魚人島の英雄なんだよ!｣

ﾀｲｶﾞｰ｢嬉しいねぇ…｣

【回想】
ﾀｲｶﾞｰ(他に挑んでくる奴がいねぇならおれがこの魚人街を仕切る!おれはﾀｲｶﾞｰ!子分はおれが守ってやる!)

ﾀｲｶﾞｰ｢…｣

全員｢お頭ああぁぁぁぁぁ!!｣

【ﾀｲﾖｳの海賊団船長 ﾌｨｯｼｬｰ･ﾀｲｶﾞｰは こうして命の幕を閉じた】

【場面変わり ﾌｰﾙｼｬｳﾄ島】

ｱｰﾛﾝ｢ぐぁぁぁ!｣
ﾎﾞﾙｻﾘｰﾉ｢おめ-がｱｰﾛﾝか何しにきたんだぁ のこのことぉ｣

【海軍本部中将ﾎﾞﾙｻﾘｰﾉ(後の大将黄猿)】

ｱｰﾛﾝ｢ｳｳｩ…!ﾀｲの大ｱﾆｷを売った人間どもを皆殺しにするんだよ!通報した島にも行くぞ!ﾌｨｯｼｬｰ･ﾀｲｶﾞｰは死んだ!!お前ら下等種族に殺されたんだ!｣
ﾎﾞﾙｻﾘｰﾉ｢お-そうかい死んだか…まぁしかしお前…わっしと来てもらうよぉ…｣

完